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走行ブレーキのライニングの異常摩耗

作業日:2017年8月

長かった夏も終わりに近づき、秋の気配がしてきました。

海水浴、花火に夏祭り、アウトドアなど、夏のレジャーで思い出をご家族と作られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

さて今回は、明電舎製の走行ギヤードモーターのブレーキ部分の不具合事例です。

写真1枚目は、手前が正常品、奥が今回の不具合品です。正常品にはブレーキラインニングが張り付けられていますが、不具合品はライニングがすべて削り取られてしまい、さらにライニングが貼り付けてあった鉄板までも削ってしまっています。

なぜこの様な状態になったのでしょうか。次の2枚目の写真から原因を説明します。

 

写真2枚目は、カドウコア(ブレーキ解放時にブレーキコイルに磁力で吸い寄せられる機能と、制動時にブレーキライニングと接触し摩擦で制動する機能を兼ねたデイスク)です。

本製品のカドウコアは、写真左側の様に2枚のディスクを溶接で張り合わせた状態が正常なのですが、右の不具合品は ” 張り合わせの溶接 ” が破断しています。

 

走行ブレーキは、本来写真3枚目の様に(写真のバネは本製品の物ではありませんイメージ用です。)、解放時はブレーキコイルにカドウコアが吸引されます。制動時はバネによってカドウコアをライニングに押さえ付け摩擦によって制動します。この時、溶接で張り合わせた2枚のディスクは一緒に動きます。

ところが、カドウコアの張り合わせの溶接が破断しますと、2枚のディスクはそれぞれ異なる動きをし、解放時コイル側のデイスクのみが吸引され、(分離した2枚を一緒に吸引する磁力は無かった)一方ライニング側のディスクは、コイル側ディスクの穴を通過したバネによって、そのままライニングに抑え付けられてしまいます。

つまり、ブレーキが効いた状態でモーターを回転させた状態と同じ状況となり、その時の異常な摩擦力でライニングを削ってしまった様です。

 

今回は幸い、定期点検時に前回点検時とは異なる動きや異音を認識し、ブレーキカーバーを開けたところ中から大量のブレーキ粉が出てきたため、分解点検を行ったことで異常を発見し早期に対応できましたが、このまま使い続けていたら最悪モーター焼損という事態も考えられました。

 

定期的な点検の重要性を再認識した事例でした。